美しく哀しき負の世界遺産 ゴレ島

ダカールから2台のクルマを日本へ輸送する手続きに、ほぼ1日消費するだろうと予想していたが、CFAO MotorsのYedy Ngomさんが煩雑な手続きを快く引き受けてくれたおかげでスケジュールに空きが出来た。メンバー思いおもいに街をぶらぶらしたり、疲れ切った身体を宿泊先で休めるのも悪くはないが、ダカールのすぐ沖合3kmに浮かぶ「ゴレ島」が誘惑する。17年前に訪れた島がどうなっているのか?どうしても気になり、メンバー全員でフェリーに乗り込んだ。

 

ゴレ島往きフェリーには人種、年齢、性別を問わず多くの人が乗り込んでくる。

 

17年前のゴレ島に思いを馳せる横田監督。

 

ROOTSルーツ は’70年代のアメリカテレビドラマ長編シリーズだ。黒人奴隷貿易とアメリカ社会の暗部を題材にした作家アレックス・ヘイリーのベストセラー小説をドラマ化した作品はエミー賞最優秀作品賞に選ばれたことから日本でも放送され、「ルーツ」や主人公の名前「クンタ・キンテ」が流行語になるなど、大反響を呼んだので覚えている方も多いのではないだろうか。クンタから始まる親子孫三代に渡る壮大なドラマはガンビア(西アフリカ)のマンディンカ族の伝統と風習、そしてプライドを堅持して打ちのめされながらも何度でも立ち上がるクンタ・キンテの姿が印象的だった。

 

2年前にリメイクされた「ROOTSルーツ 2016 」(2時間×4話)も全米をはじめ世界中で話題となり、日本でもCSで数回放送された。この旅が企画される数ヶ月前、全話一挙放送というスペシャル番組で運良く全話を視聴する事が出来たので、ゴレ島には特に強い関心を抱いていた。

 

フェリーで20分ほどの短いクルージングでゴレ島が目の前に迫ってくる。脳裏に焼きつく黒人奴隷の苦しみ、悲哀に満ちた表情が島が近づくにつれ鮮明になっていく。クンタ・キンテが船積みされたガンビア「ジェームス島(現クンタ・キンテ島)」と並び、西アフリカ奴隷貿易の拠点だったのが今回訪れた負の世界遺産「ゴレ島」だ。おそらくこの島でもあのシーンと同じような蛮行が繰り広げられていたに違いないのだ。

 

ダカールを出航して僅か20分でゴレ島の外洋側にある桟橋に到着する。

 

美しいビーチでくつろぐ観光客。

 

コロニアル風の南国リゾートのような小路。海の向こうにダカールの街を望む。

 

カラフルなアート作品を展示するギャラリー。

 

石畳の坂を登り島の頂上をめざす。

 

道端ではトカゲがお出迎え。

 

朽ち果てたフランス軍の要塞跡があちらこちらに残っている。

 

坂道に点在するアクセサリー屋さん。土産物は島の貴重な収入源だ。

 

かつてのトーチカは島で暮らす人々の住まいに変わっていた。

 

島の側では油田の掘削が行われていた。

 

フランス軍がイギリス艦隊を迎え撃つために作ったという巨大な240mm砲台跡。

 

ゴレ島にはセネガル最古のモスクがある。

 

奴隷解放のモニュメント。奥に見えるのが「奴隷の家」だ。

 

奴隷の家。下階は狭い窓がひとつあるだけで薄暗く、低い天井に息がつまりそうだ。上階では奴隷商人たちが優雅な暮らしをしていたという。

 

「帰らずの扉」なんと切ない響きだろう。ここから多くの人たちが奴隷としてアメリカやカリブ海の島々へ売られ、トウモロコシ、サトウキビのプランテーションで働かされた。

 

いったい何人の奴隷が歩けば敷石がこれほどツルツルになるのか。

 

負の世界遺産 ゴレ島

 

ROOTSルーツ 2016 」(2時間×4話)は再放送になる可能性がおおいにあるので、もしも視聴することがあれば、こんな島から売られていったのだなと、この記事を思い出してください。

 

ETHICAL CRUISE 2018 Paris Dakar 番外編は不定期ながら今後も記事をアップして行く予定です。